音楽

Dippin’

世の中には、素晴らしい音楽が星の数ほどある。もし可能だったとしても、そこへ自分の作品を加えようとすることに如何ほどの意味があるのか。愚行権の行使でしかない。

ただ、何が素晴らしいかは、なかなか説明するのが難しい。人によって、夜空に見える星の数にも多寡があるだろう。例えば、Hank Mobleyの”Dippin’”をどこがどのように良いのか分析して伝えようという気には、とてもなれない。1曲目の”The Dip”で何とも言えないウキウキするような気分を共有できなければ、もう後は何を言っても無駄としか思えないのだ。

Hank Mobley, "Dippin'"
Hank Mobley, “Dippin'”

そのように批評を門前払いして人を楽しませる力を、「芸」と呼ぶのだろう。テナー・サックスのMobleyを始めとして、トランペットのLee Morgan、ピアノのHarold Mabern, Jr.、ベースのLarry Ridley、そしてドラムのBilly Higgins、揃いも揃って「芸」の人である。ちょっとカッコ良すぎるぐらいだ。ただ、「芸」の力だけでは説明できないような、様々な要素の化学反応が1965年6月18日のニュー・ジャージー、ヴァン=ゲルダー・スタジオで起きたに違いない。それが音楽だろう。そして、どうすれば音楽に立ち会えるかは、必ずしも自明と言えない。

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